丸さんの医療コラム

医療ジャーナリスト・丸山寛之さんの医療・健康コラムです。
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笑いは最高の良薬

 2、3年前の話だが、資生堂がこんな実験を行った。同一モデルのいろいろな顔の画像を、20代の男女60人が選んだ。結果、、最も親しみやすいのは「素顔の120%スマイル」、最も魅力的なのは「メークした顔の80%スマイル」、最も気品があるのは「メークした顔の60%スマイル」―が一番多く選ばれた。
 「笑顔にまさる化粧なし」と言ったのはだれだったか。なかなかの名言だと思うが、化粧品会社としてはそれでは困るだろう。


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 ま、しかし、素顔であれ、化粧顔であれ、親しみやすさ、魅力、気品、いずれにおいても絶対に必要なのは、スマイル。これはだれもが認める条件だろう。

 近年、大声で笑うと、病気とたたかうリンパ球がふえたり、痛みの元になる血液中の物質がへったりする事実を確かめた研究が数多く報告されている。
 その「笑い療法」の元祖は、米国のジャーナリスト、ノーマン・カズンズだ。彼は49歳のとき、強直性脊椎炎という難病にかかり、「治る見込みは500分の1」と診断された。ならば、せめて楽しくと、病室にコメディ映画を持ち込み、思いっきり笑った。

 「映画を見て10分間笑うと、2時間は痛みが消え、眠れた。愉快なコントを読んだあと、赤沈(血沈)を測ると、5ポイント低くなっていた。一時は115にまで達した数値が80台に下がり、手の親指を動かしても痛みを感じなくなった。笑いのおかげだ」(岩波書店刊『笑いと治癒力』)。
 数か月後、全快。退院すると医学を猛勉強し、自分の体験をもとに論文を書き上げて発表した。笑いは薬か否か、医学界に一大論議が巻き起こった。カズンズは、カリフォルニア大学医学部の教授になり、「笑い療法研究学会」を創設した(1982年)。

 日本では、「がんの生きがい療法」で知られる柴田病院(岡山県倉敷市)の伊丹仁朗医師と、日本医大の吉野慎一教授らの研究が有名だ。

 伊丹先生は、ガンを病む人たちに、「なんば花月」で漫才などを3時間見て笑ってもらい、血液中のNK(ナチュラルキラー)細胞の活性度を調べた。NK細胞は免疫をになうリンパ球の一つ。ガン細胞や感染症ウイルスをやっつける力をもっている。ガン患者のNK活性は健康な人よりも低く、ガン患者のなかでも活性の低い人ほど生存率が低いというデータもある。

 3時間、大笑いしたあとのNK活性は著しく上昇していた。免疫力を高める薬を使って同じ程度に上昇させるには3日前後かかるそうだ。
 吉野教授は、林家木久蔵さんを病院に招き、リウマチの患者たちに落語を1時間聞いてもらい、その前後の血液を調べた。するとリウマチを悪化させる物質(インターロイキン6)が減少し、痛みが楽になった。「1時間でこれほど効果が現れるリウマチ治療薬はない」という。

 別の実験では、作り笑いを二時間続けたら、NK細胞が活性化した。むりやり笑顔をこしらえていると、やがて喜びやおかしさの感情が生じ、本当の笑みがこぼれ、健康にプラスする。実験をした医学者は、「笑いは副作用のない最高の良薬です」と話している。

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