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ぎゅっ…ストン「肩こり解消法」―操体法から

 「肩が凝る」という形容は夏目漱石に始まるそうだ。『門』(明治43年=1910)に、主人公の宗助が、妻の御米(およね)の肩を指圧するこんな場面がある。「指で圧して見ると、頸と肩の継目の少し背中へ寄つた局部が、石の様に凝つてゐた。御米は男の力一杯にそれを抑えて呉れと頼んだ。宗助の額からは汗が煮染み出した。それでも御米の満足する程は力が出なかつた」

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 それ以前は「肩がはる」(樋口一葉『ゆく雲』)といった表現しかなかった。だからやや強引だが、「肩こり」は漱石の造語としていいのではないだろうか。「肩こり」にピッタリ合う単語は、英語やドイツ語やフランス語にはないらしい。言葉がないくらいだから、そもそも肩がこるという症状が欧米人にはないらしい。
 ところが、厚生労働省の国民生活基礎調査によると、病気やけがなどの自覚症状のうち、女性では1位、男性でも腰痛に次ぐ2位が、肩こりである。日本人は肩こり民族である。このことは日本人の国民性を考察するヒントのひとつになるかもしれない。
 肩こりは、「単純性(筋肉疲労)」「症候性(頸椎と肩関節の疾患)」「関連痛(内臓疾患や耳・鼻・目・歯などのトラブル)」「心因性(うつ病や自律神経障害)」の4つに分類される。圧倒的に多いのは単純性肩こりだ。デスクワークなどで同じ姿勢を続けたり、偏った方向にだけ手や腕を動かしたり、根を詰めたりしたときに起こる。
 そんなとき、首の後ろから肩、背中にかけての大きな筋肉(僧帽筋)では血のめぐりが悪くなり、老廃物がたまる。老廃物は末梢神経を刺激し、こりや痛み、張りが生じる。
 これによく効く簡単な即効療法がある。
 首をすくめるように両肩をぎゅっと持ち上げて、一呼吸したあと息を吐くのと同時に肩の力を抜き、ストンと落とす。ぎゅっ、ストン、ぎゅっ、ストン、ぎゅっ、ストン……この動作を何回か繰り返すと、軽い肩こりならいっぺんにとれる。とれなかったら30~40分おきに何度でもやってみよう。しまいにはきっとよくなるハズである。
 日常、この動作をクセのようにやるのは、肩こりの最上の予防法だ。不肖マルヤマがしばしばクビは回らなくなるものの、肩こり知らずであるのは、そのおかげだろうと思う(あるいは、単に鈍感なだけかもしれないが)。
 この肩こり解消・予防法は、橋本敬三医師考案の「操体法」のホンの一部である。操体法とは、体の具合が悪くなるのは、体に歪みができたことの現れなのだから、体をうまく動かして元の歪みのない「正体」に戻せばよい、という考え方に基づく運動療法だ。その合理性は、東北大学医学部生理学教室が実験的に解明している。
 現在、全国約200名の医師、整体師、マッサージ師が、診療に操体法をとり入れて、夜尿症から高血圧までの諸病に効果をあげていると聞いた。

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