丸さんの医療コラム

医療ジャーナリスト・丸山寛之さんの医療・健康コラムです。
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冷え取り安眠入浴法(半身浴の効果)

 18世紀初頭のオランダにブールハーフェなる天下に隠れもない名医がいた。いくら名医でも寿命には勝てない。病名は不明だが、70歳ばかりで没し、いかなる理由でか、遺産が競売されることとなった。


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 競売品のなかに1冊の本があった。手づくりの書物がしっかり封印され、表紙に「医学の無類で最も深い秘密」とある。この手稿本を1人の医者が非常な高値で落札した。さあ、なにはともあれ当代随一の名医が書き遺した「医学の秘密」である。なにか画期的な難病の治療法か、不老長寿の妙薬の処方か、さぞかし貴重な学殖知識が述べられてあるに違いない。

 ふるえる指で封印を切り、開いてみたら、なんと、どのぺージも真っ白けのままではないか。いや、第1ぺージだけに、大きな文字でこう書かれてあった。「頭を冷やし、足を温かくし、体を窮屈にするな。そうすれば、お前は、すべての医者をあざ笑うことができるだろう」

 真偽はともかく、これはよくできた健康説話である。頭を熱くしない、足を冷やさない、窮屈な衣服を着ない、どれも健康法の基本的な心得である。むろん「頭を冷やし、足を温かくし」を、われらの常套句に直せば「頭寒足熱」であります。

 人間の体は、上半身は温度が高く(心臓を中心に37度前後)、下半身は低い(足先は31度以下)。このような体温の上下差は、全身の血液循環を悪くする。血液循環が悪くなると、動脈からは十分な酸素や栄養が送られてこない。静脈からは炭酸ガスや老廃物がスムーズに出ていかない。そうした状態が長く続くと、しだいに体調が低下し、本格的な悪化(つまり病気)を招くことになる。

 それゆえ、病気を防ぎ、病気を治し、からだを健康に保ちたいならば、まず体温の上下差を解消し、下半身の冷えてない状態をつくらなければいけない―という「冷えとり健康法」を提唱するのは、名古屋市近郊に住む進藤義晴医師(元小牧市民病院副院長)。その進藤先生が、体の冷えを効果的にとる最上の方法として推奨するのが「半身浴」である。(ちなみに、この「半身浴」というコトバ、健康雑誌『壮快』が、進藤式冷えとり健康'法を紹介したさいの造語だ)。

 毎日、みぞおちから下の半身を、ぬるめの湯(体温より少し高い程度)に、20~30分間つける入浴法を励行すれば、全身の血行がよくなり、心身のしこりがほぐれ(つまりストレスが解消)、いろいろな症状や病気が軽快、体調がめきめきよくなる。

 就寝前に行えばぐっすり安眠間違いなし。名古屋のブールハーフェはそう教えてくれたのだった。

 で、その日の夕方―。新幹線に乗る前に食事をとったレストランのテレビで、「新しい年号は『平成』です」と、墨書した半紙をかざす故小渕氏を見たことを憶えている。、だから不肖マルヤマの半身浴歴は、平成の世と同時に始まったわけで、いまどうやら元気でいられるのは、あるいは少なからずそのおカゲなのかもしれない。
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