丸さんの医療コラム

医療ジャーナリスト・丸山寛之さんの医療・健康コラムです。
「健康診断・血液検査結果と数値の見方ガイド」が提供いたします。

丸さんの医療コラム・最新エントリー

祝婚の辞

 婚礼に招ばれて、行った。披露宴のスピーチは、新郎側・新婦側それぞれ三名、クジ引きで決まる趣向だった。いいアイデアだと感心し、自分に当たる気づかいはまず無用だろうと安心し、美味さまざまの口果報を楽しんでいた。冷えたビールが滅法うまかった。
 だが、好事魔多し、人生一寸先は闇、寝耳に水、青天の霹靂、泰平の眠りをさます蒸気船……である。新郎が、箱の中から取り出した二つ折りの紙を開いて、告知したのが、わが名であったから、いやもう大いに周章狼狽した。

スポンサードリンク
 「ええッ! そんなバカな!」
 アワを食い、うろたえている手にマイクを渡されてしまった。
 こんなとき、慌てず騒がず、人生訓の一つも弁ずることができたらどんなにいいだろう。これだから人間、不断の修養が大事だと思うのだが、いまごろ気づいても手遅れである。しどろもどろ、なにをしゃべったか、ほとんど覚えていないけど、醜態をさらした自己嫌悪だけはしっかり残っている。
 ―というわけで、はなはだ場違いながら、ここでスピーチのやり直しをさせてください。
 晋一郎君、登美枝さん、おめでとう。今日は「みどりの日」、以前は「天皇誕生日」でしたが、あなた方にとってはさしづめ「ばら色の日」で「幸福誕生日」であるでしょう。でも、この会場には、あなた方よりももっと深く豊かな幸福感を噛みしめている方が、四人おられる。言うまでもなく、あなた方のご両親です。
 親というのは―そのうち、あなた方も必ず実感することになるでしょうが―子どもさえ幸せであれば、自分もこの上なく幸せでいられるという無私無欲的愛情の持主で、そうした単純な精神構造は古来「親バカ」と形容され、俳聖芭蕉にも、親馬鹿とわが名呼ばれん五月晴 という名句がある―というのはウソだけど、そんなご両親に、こんどはあなた方が恩返しをする番、親孝行をする番です。
 何を、どうしたらいいか。じつに簡単なことで、二人が力を合わせて明るい幸せな家庭をつくり上げさえすれば、よい。それがそのまま親孝行になるのです。
 それにはカネやらなにやら先立つ条件もあるだろうが、なんといっても最も基本的な必要条件は、健康でしょう。
 その点、登美枝さんは臨床検査技師。愛情プラス知識の相乗効果が目に見えるようですが、一つ気がかりなのは「頭のいい女性は料理が巧い」ということ。料理がうまければ、どうしても食べ過ぎてしまい、結果、肥満を招くことになるのは避けられぬ運命です。
 肥満が健康の大敵であるのは、あれこれあげつらうまでない常識で、昔は「貧乏、肥満なし」などと言われましたが、当節は「貧乏デブ」も結構多くて、現にいま、その実物見本がマイクを持って立っているのを、みなさん、ご覧になっているわけでして……。健康のため食べ過ぎにはくれぐれも注意しましょう。
 ところで、私は昔、夕刊新聞の文化部記者だったとき、石原裕次郎・北原三枝の結婚式を取材したことがあります。今日、登美枝さんは二度「お色直し」をされましたが、北原三枝さんはお色直しなし。披露宴の間、ずっと文金島田に打ち掛け姿のままでした。スターでさえそうだったのですから、庶民の場合は推して知るべし。昭和35年はまだそういう時代でした。
 あのころに比べると、不況とはいえ、今の日本人は格段に豊かな生活を手に入れています。お互い、元気だしましよう。
 それにしても、晋一郎君、ウマくやったなあ。おめでとう!
(「信用組合」2003年6月号掲載)
スポンサードリンク
 
健康診断・血液検査結果と数値の見方ガイド